インドネシアの国語は、何を隠そうインドネシア語である。
今まで、アラビア語、フランス語、中国語、韓国語、ベトナム語圏などにも赴いたが、英語を除けばインドネシア語が一番簡単に感じる。 *)スペイン語圏にはまだ行ったことがない
何故かというと、表記がローマ字、発音がラク、文法が単純、だからである。
インドネシアはそもそも約2万の島々に分散する多民族国家であり、存在する言語は約600。インドネシア語は共通言語として用意されたものだから、シンプルにできているのは、まあ当然な訳である。
ローマ字だから発音もヘボン式を基本に、独特の発音さえ押さえて読めば通じるので、そういう意味でも楽である。
Saya は“私”の意味で、“Saya mau teh panas(私・欲しい・茶・熱い)”などと主語としても使うが、“Ini untuk saya?(これ・~のため・私 = これ私に?)”のように目的語になっても格変化しない。また、Be動詞もないから、ほぼテキトーに単語を並べるだけで十分意味が通じてしまう。
さらに、“Jalan ini ok? (この道でいいの?)” “Jalan-jalan saja(ちょっと散歩へ)”や、
“Ada pen?(ペン持ってる?)” “Kamar kucil ada di sana(トイレならそこにあるよ)”などと、一つの単語で色々応用が利くから語彙は少なくて済むので、もうほとんど暗記力のないオジサンにはとても有難い。
発音も難しくないから、耳に入ってきやすいし、言いやすい。
“プランプラン(ゆっくり)” “カナン、キリ(右、左)” “イカン(魚)” “サンパイ(~まで)” “キタ(私たち)” “キラキラ(だいたい)” “ポトン(切る)”
などはまるで日本語のようである。
ある日街を歩いていると、哀愁漂うメロディーとともに、「珍太~来た~」と歌う声が聞こえてきた。
ナンだ!? とその時は思ったが、考えてみるとあれは多分、“Cinta kita(愛・私たち = 私たちの愛)” だったのではないかと思うのである。