オランダ国境に近づくと、明らかに空気が変わった。気温が少し低く、湿度が少し上がったのだと思う。この気候と牧草の匂い... フッとイングランド中・北部を思い出した。肌感覚の記憶というものもあるらしい。これまではもっとカラッと大陸的だったんだろう。
いちおう、ドイツ‐オランダ国境。
欧州大陸部を旅するのは4回目。幾度となく国境を越えてきたが、これなんてむしろ分かりやすい方だ。地図アプリを凝視しても分からないときあるし。
今回、チューリッヒからの入国だからパスポートにスイスのスタンプはある。だが、ドイツ、フランス、オランダは通り過ぎただけなので無い。つまり証拠は何も残らない。
そういや曇り空も久しぶりだなぁ。しっとり...
お、風車だ。さすがオランダ
建物も変わる。(たぶん年間日照時間が短いから)窓が大きく、レンガ造りが多くなる。
オランダ入国早々、トラブル発生。なんと水位が低くてフェリーが欠航になっている。橋があるところまで迂回するとプラス20km... ヤレヤレ (-_-;)
まぁしゃあない。やっとの思いでキャンプ場にたどり着くと、支払いは現金のみという。オランダ(の田舎)では、意外とクレジットカードが使えないことを痛感。
今は円安だから(JPY決済の)クレジットカードよりも、米ドルから換金したユーロを使ったほうがいい、と現金優先で使っていたらいつの間にかカネが無い。
ATMのある町まで往復10km。それだったら10km進んで先のキャンプ場に行ったほうがいい。途中に別の町もある。
で、その町でカネを引き出してチャリのところに戻ると、俺と同じBirdyを持った紳士が...
Birdy(日本ではコピーライトの制約で“BD-1”として販売)は何を隠そうドイツ製。ドイツにはさぞ多かろうと思って来たのにこれまで見かけたのは1台だけ。自転車の多いドイツでこれは異常なことだ。
もちろんオランダ(しかも田舎)でもかなり希少らしく、思わず話が弾んでしまった。
が、俺は疲れている。後ろ髪を引かれる思いで別れを告げると、「なにキャンプ場に行く?それならウチのガーデンでやればいい。なんならベッドルームも空いている」という。
一瞬遠慮しようかと思ったが、テン張るだけなら大して迷惑でもなかろうと判断し、素直に好意に甘えることに。(結果的にめっちゃお世話になったが... )
Jan(ヤン)氏のお庭。自家栽培の野菜料理や果物、お手製チーズなどを振舞ってくれた。
これまで楽ばかりしてきたからこの日走った88kmは最長距離となった。
翌日は、Janがボランティアでチーズを作っている農場に連れて行ってもらった。オランダ人は皆フレンドリーで、いきなり行ったのに歓迎してくれた。
Janの作業前、いい加減失礼することに。
サイクリングロードまで送ってもらい、感謝の念と別れを告げる。
しばらくすると雨が降り出した。雨と呼べる雨はチューリッヒ以来だ。チャリ旅を始めてからは、通り雨がスイスで一回、ドイツで一回、10分くらい降られただけなのでほぼ初めて。(毎日快晴だから“ヨーロッパの夏っていいなぁ“などと思っていたが、今年は干ばつらしく異常らしい。)
19日目にして初めてカッパを着て走り、降ったりやんだりの空の下をほどほど走ってWijk bij Duurstede近くのキャンプ場へ。
ここが良かった。屋内の休憩スペースがあったので超快適 (^^♪
まだ新しいらしく、世界地図にキャンパーの出身地を旗を立てていたのだが、俺は“The 1st Japanese”となった。
隣のテントのベルギー人やドイツのサイクリスト達と一緒に食事したり、ソフト的にもハード的にも居心地が良いので2泊の後、また出発。
結局、Janと別れた時の雨と、その2日後にパラっと降っただけで再びあっけらかんと快晴に戻った。
そういえばもう既にライン川最終ステージ、デルタである。地形はフラットで大小の運河が巡らされている。
ライン川自体は複数に分岐し、名目化している感がないでもない。
当初の予想では、ライン下流に行くほどに景色は“大あじ”になり退屈し、気持ちもダレて来るだろうから、途中でブレーメンやハンブルク方向に進路を変えるなどしようかと思っていた。ところが実際は意外なことに飽きが来ない。退屈しのぎに持ってきたオーディオブックも一つも聞いていない。
気球... てことは天気が安定してきているのか?
とあるキャンプ場の芝生で寝転んでいて気付いた。確かシロツメクサってオランダから(梱包緩衝材として)来たんじゃなかったっけ?
というある朝、風車群落突入。
スゲーいっぱいある。
さて明日からどうしよう。ロッテルダムでゆっくり考えるつもりだったからノーアイデアだ。。。
ここはキンデルダイクという場所で、ロッテルダムの郊外である。十数キロ走り、中心部へ。
いやぁ、良く(飽きずに)ここまで来たなぁ。
さて、ロッテルダム観光しよ~っ、と言うのがこの日の予定だったのだが、ふと距離表を見ると “河口まで30km” とある。「あとたった2時間?」と思ったが最後、急にとっとと終わらしたい衝動に駆られた。
もうこうなると俺はダメな人で、行きたかった戦争博物館などから目を背け、ワシワシとペダルを踏んでしまう。3週間かけてやっとたどり着いたロッテルダム市街がどんどん過ぎてゆく。
残り15km、河口らしき水面が見えた。今度は近代的な風車群が両岸に現れ、旅の終わりを祝福してくれているような感覚... 。
海からの向かい風が強く、この15kmがなかなか進まない。進まないから開き直ってサイクリングを味わう。この3週間を振り返ってもみる。
累積距離を見ると1,000kmに近づいていく、千キロ... 長いのか短いのか分からない。
ついに海辺に到達。
いちおう、突堤の最後まで行ってみた。数組のサイクリストが居たので見回したが、知った顔はない。
ここで、チューリッヒ空港で0に合わせた走行距離が1,000.0kmに達した。ただの偶然だがキリはいい。
“海の家”的な店があったので缶ビールを買い、一人ささやかに無事の到達を祝った。いちどに気が抜けて体が急に重くなる。
なんとか一番近くのキャンプ場まで走り、チェックイン。大きなキャンプ場で受付が開いていて良かった。(大半のキャンプ場は15時くらいまで昼休みで閉まり、俺は待つことが多い。)
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