お岩木山の翌日、酸ヶ湯(すかゆ)温泉にやってきた。もちろん臨むは八甲田(北八甲田連峰)である。
駐車場の空気は着替えるのが億劫なくらい冷涼であったが、すぐに心地良い日差しに包まれた。
他の東北の山々のように緩傾斜が多く、どんどん進む。当初、下の行程を予定したが、澄んだ空気と眺望に魅せられ、小岳の先の高田大岳まで往復、さらに大岳の後、赤倉岳まで寄り道してぐるっと大回りすることにした。
仙人岱から、あまり大きくない大岳を横目に、
やっぱり小さい小岳に向かう。
小岳から、さらに奥に見える高田大岳。
途中、右手には南八甲田のなだらかな山並み
(トレランで行ってみたい!)と、その向こうに十和田湖(白く雲がかかっている)、さらに岩手山のシルエットが見える。
左手には、“死の彷徨”の雪中行軍が遭難した丘陵地と、奥には下北半島の恐山周辺も見渡せた。
高田大岳から振り返ると、左から小岳、大岳、井戸岳 - 赤倉岳、左奥に岩木山。
仙人岱まで戻り、大岳へ。
青森市と津軽半島、下北半島の先端まで見えた。
すこし左には岩木山、その麓に弘前市、右は青森市。この南には白神山地、さらに鳥海山も見えた。
赤倉岳経由で宮様コースを辿れば、毛無岱へ直接出る。
毛無岱(上)から同(下)を見下ろすのは独特の眺めだ。
東北のハイカーは尾瀬に行く必要はない
ほどなく、黄金色に包まれた酸ヶ湯に下山する。
この日の山行は、本州最北に連なる山々の地理、山容、地勢、風土、植生、色彩、眺望などの特徴を改めて吟味する上でも、今回の山旅のクライマックスだった。
これまで、この東北の比類なき山々を知らずに、少しは日本の山を知ったふうに感じていた自分が恥ずかしい。今まで俺が登っていた山は何だったんだろうか、とさえ思った。
下山後、十和田湖から見た八甲田。
【行程】 酸ヶ湯温泉 - 1h05m - 仙人岱 - 1h00m - 高田大岳 - 1h05m - 仙人岱 - 30m - 大岳 - 40m - 赤倉岳(休 25m) - 1h45m - 酸ヶ湯温泉
ところで、八甲田といえば自ずと想起する、
世界山岳史上最多といわれる犠牲者を出した遭難事件。件の五連隊は、210名中 死亡者は199名であったが、生存者も居ただけにその記録はリアリティに溢れ、それに基づく小説・映画の内容は生々しい。
下山後、その地に寄ってみた。無雪期は何てことない平和な丘である。
記念館には、行軍中(左)や、事後捜索中(右)などのリアル写真が展示されている。
遺体発見の様子(左)や、生存者(右)の写真も。
両連隊の装備も。
太平洋戦争開戦の経緯とかも思いだし、日本人の集団心理や愚かな指揮系統の一面を再確認した。
雪山は怖い。が、ヒトはもっと恐ろしい。