カナダ・ユーコン、川下り。

高校生の時に読んだ、野田知佑の『ゆらゆらとユーコン』で憧れたユーコン川下り。夢を目標へ、目標を計画へ。満を持して39歳のおっさん、ついにやってみました。 この計画のために、那珂川、四万十川で修業した記録は、右のCategoryから“その他_川下り”をご参照ください。

ゆらゆらとユーコン -1

山登りの反対は、川下りだと思う。

と言う訳で、ユーコンを下ってみた。



≪1日目≫

カヤックのレンタル会社に車で送ってもらい、ユーコンの支流、テスリン川のJohnson's Crossing を出発する。



最初イマイチだった天候も徐々に回復。





この日は40km進んで、18時前にハンティング・キャビンを見つけて(別にキャビンに入れるわけではないが、人工物が多いほうが熊が出にくいので)宿泊。



持参した2Lのワインと熊撃退用のベア・スプレー



≪2日目≫

快晴・風弱し。川面は鏡のよう。









昼飯はフネを降りずに弁当(↓ハムマヨ醤油ごはん)を食ったり、



岸で一休みしながらメシを作ったり(サッポロ一番!)。食料はもちろん途中で買うことはできないので、日数分をWhitehorseという街で調達した。



鳥以外の動物はムース(↓)やビーバー、リスなどが見られる。





60km進んで、中洲の島で宿泊(全てテント)。島も熊がいる可能性が低い。通常は見通しの良い岸辺で宿泊するが、今回は融雪のピークで砂や石の川原が全て水没していた。


”という漢字を見立てた人の感覚は、非常に正しい気がした。



≪3日目≫

今回最大のヒットは、出発前に Dried Vegetable が入手できたことである。野菜シチューとお茶漬けパスタで朝食を取っていると、嫌~な雲行きに・・・



ぽつりぽつり、から始まり、時間がたつにつれて雨脚は強くなっていった。



できれば屋根のあるところで濡れたものを乾かしたい、と川地図を頼りに“Cabin”と表示のあるところを2箇所訪ねたが、朽ち果てていずれも屋根は無かった。



半ば意地になり、約100km漕いで、最後の頼みのキャンプ地にたどり着くと、立派な屋根(旧電信局の小屋)が!



ここではカナダ人男性2人とドイツ人のカップルが熱い紅茶で迎えてくれた(“How are you doing?”に“Being cold”と答えたからかも知れない。フツーは“Good”と答える)。後でお礼にウィスキーを持っていくと、カードゲームが始まり、カードが読みづらくなる24時を跨ぐまで興じた(白夜で明るい)。



≪4日目≫

すっかり天候は回復。2組はゆっくりとカナディアンカヌーを漕ぎ出した。“See you soon !!”と

別れたが、超スローペースの俺が追いつくことは無かった。



小屋の裏にトレイルが伸びていたので歩いてみる。



丘の上に立つと、滔々と流れるユーコンを見渡すことができた。ここはスタートしたテスリン川(左奥)とユーコン本流(見えないけど右奥)が合流する地点である。



さて、俺も行くか、と、のそのそ漕ぎ出す。サケと本と釣竿は川下りの必需品である。増水時は濁度が高くなり、魚がルアーを見つけられないらしく、全然釣れない。





まあいいか、と本を読んだり、居眠りしたりしながらゆらゆらと流れてゆく。


ゆらゆらとユーコン -2

いい感じのところがめっかったので、早々に落ち着く。



飲み水は川や沢の水をマイクロフィルターでろ過し、ガソリンストーブや焚火で煮沸して作る。


≪5日目≫

白夜といえど、1-4時頃は暗い。も少し寝るか。



昨年の山火事の後の両岸を縫ってゆく、この火事の中下った人に会ったが、“戦火をくぐって行くようで怖かった”と言っていた。



この日もの~んびり流れ、気持ちよさげな中の島を見っけてキャンプする。クマが居ないかどうか、チェックできるほど小さい島ではなかったが、取り敢えず居ないと信じた。(リスはいっぱい居た)


22時半頃、ようやく夕陽っぽくなり、24時になると本が読みづらくなる。睡眠時間は自分でちゃんと管理しないとメチャメチャになる。


≪6日目≫

なんか朝から天気がイマイチ。



川向こうの丘に掛かったモヤが取れたら出かけよう、と本など読んでいるうちに腹が減り、昼飯を食ってウトウトなどしている内にフネを漕ぎ出す気が失せて、同じ場所にもう1泊することに・・


でも自然にこんないいテン場があることが不思議でしょうがない。川の間際で静かに風が吹き、蚊はおらず、乾燥した枯れ木は多く焚き火に苦労せず、地面はウッドチップが敷き詰められたようでフッカフカで、連泊したくもなる。

≪7日目≫

また次の日もどんよりして、時よりパラついた。
けど3泊はねーな、と思い、出発。


でも、雲がかかっている方が偉大な自然の神々しさが増す気がした。何万年前と、同じ景色を見ているのだろう。


ふと、右岸の丘を斜めに走るトレイルを発見。フネを漕ぎつけて登ってみると、悠然と流れるユーコンの姿が。たまに上から眺めるのもいい。


雲が綺麗だ、空が偉大だ。しかも川面に映り、倍になって目に飛び込んでくる。



野田知佑の本に「ユーコン本流が濁ってくるとルアーが効かなくなるから、流れ込みに入って竿を振る」とあったのを思い出し、Little Salmon River との合流点で振ってみる。


今まで掛からなかったのが不思議なくらい、簡単に Grayling などがヒットする。たて続けに3匹ほど釣れたが、食べきれる分を考えて元気なのはリリースする。


Grayling はキレイな魚だった。ニジマスのような淡白な味だった。唐揚げとかが一番いいんだろうな、と思ったけどそんなメンドいことはせず、二枚におろして塩焼きとホイル焼きにして平らげた。



俺は釣っておいて食わないのは嫌いだ。だからリリースした魚には「悪いことをした」と思った。

ゆらゆらとユーコン -3

≪8日目≫

“Cut Bank”は地層が川の侵食で崩れたところで、透水層を横切っていると、湧水が出ていることがある。


何百キロも流れた表流水より新鮮なので、補給しておく。お湯割りの味が全然違う。


GPSで確認しながら進んでいくと、旅も終わりに近いことが分かり、寂しい気持ちになる。


最後になるであろう、ナイスな小島に上陸。


見られる相手もないのに、綺麗に咲く花々を見ていると不思議な気分になる。


トウヒは北の大地に最も似合う樹だろう。この甘く、爽やかな香り。


誰もいない、静かな、この川の中の島、シネマスコープの空に、雲のゆらめきと長い夕日を見つめながら、船底で冷やされた最後の一本のカナディアンビアを煽る。




22時半、やっとそれらしくなるまで、ゆっくりと空を眺める。こんな贅沢はどうしたら他に得られるのだろうか。



≪9日目≫

名残惜しむような快晴、350km下り、山並みはずいぶん開けてきたようだ。空が、大きい。


バシャバシャと、随分でかい魚が跳ねているようなので、竿を一生懸命振っていると、犯人はビーバーだった。


そうこうしている内に、終着点(カヌーレンタル会社に頼んだピックアップポイント)の”Carmacks Campground”へ。(居眠りとかして通り過ぎたらどおなるんだろうか・・・)



終着駅には、”文明”が待っていた。


チーズバーガーが、えらく手の込んだ料理に見える。
ウマイが、カナダの食いもん(外食)は高い。(↓多分7-8ドルしたと思う)


無事、カヌーレンタル会社にピックアップしてもらい、拠点の街、Whitehorse ヘ。


ゆらゆらとユーコン -Info

【旅程】
25-Jun 成田 => バンクーバー => ホワイトホース キャンプ場着(22時頃)、テン泊
26-Jun ホワイトホースで食料、酒、燃料、浄水器等購入。カヤックレンタル会社と打合せ。テン泊 
27-Jun  テスリン川、Johnson's Crossing まで車で送ってもらい、出発。
28-Jun  テスリン川
29-Jun  ユーコン合流地点まで
30-Jun  ユーコン川
1-Jul  ユーコン川
2-Jul  ユーコン川
3-Jul  ユーコン川
4-Jul  ユーコン川
5-Jul  ユーコン川、Carmacks, Coal Mine Campground にてピックアップ、ホワイトホース着、バックパッカーズ泊
6-Jul  ホワイトホース => バンクーバー。 Gastown のバックパッカーズ泊
7-Jul  バンクーバー => 
8-Jul    成田着、実家に戻ってソッコーでロードバイクのパッキング(翌週のレースのため)
9-Jul    何事もなかったように出勤


バンクーバー近郊の山にはまだ雪が残っていた。


バンクーバーからエア・カナダで2時間ちょい、21時頃、寒ーいホワイトホース着。
気候は昼夜を含めて、日本の真夏の3000m級の山上と似ている。使った装備もそのくらい。



この時間もうバスは無い。タクシーで20ドル、町はずれのキャンプ場へ。

ホワイトホースの町は歩いて回れる大きさ。小さな町だがアウトドアグッズが充実。
街の人は親切で明るい。銀行とかでも“Have a nice day!”などと言ってくれる。



帰り、バスを待っている間に近くのスタバでコーヒーを頼む。本文で食べ物は高い、と書いたが、コーヒーは安くてうまかった。

バスで空港へ(2.5ドル)。バスの先頭部にはバイクラックが付いていて、自由にバイクを乗せられる。

日本のバスのように案内は無いから、運転手に着いたら教えてくれるよう頼む。降りるとき“Have a nice flight !”と言ってくれた。気持ちのいい挨拶だ。


帰りはエア・カナダとJALの乗り継ぎが悪く(エア・カナダ同士なら乗り継げる)、バンクーバーに一泊。


初夏を楽しむ人々は、昼からオープンテラスでビールを飲んでいた。


町並みは明るい。ホワイトホースより気温がかなり高い。半袖の人が大半。


俺も久々のビールを2-3杯飲んで、ほろ酔い気分でトロリーに乗って町並みを眺めようと思った。

が、レンタルサイクルを発見。ん?チャリ? ・・・急に次週のトライアスロンのレースにエントリーしていることに気付く。

この2週間全くトレーニングしてないし、ちっと踏むか。

ダウンタウンに隣接したスタンレーパークには自転車レーンも整備されている。
MTBを3時間がしがし乗って、一応トレーニング気分。ついでに街も観光。


おお、これが例のカエデだろうか。


夕方はバンクーバーの地ビール。空港までの電車賃を除き、有り金ぎりぎりまで飲んだ。


バンクーバーには、暗い夜があった。